入試本番まであと四カ月余り。「四カ月しかない」「まだ四カ月ある」。とらえ方ひとつで、受験勉強に取り組む意欲も大きく異なってきます。もちろん、「まだ」と明るいチャレンジ精神で、より一層勉強に励むべきですが、私は一歩進めて、「四カ月は、十二カ月あることだよ」と、受験生を励ましています。
どういうこと?首を傾げている人も多いと思いますが、計算式はすこぶる明快です。今までよりも勉強量を一・五倍、スピードと集中力を二倍に増やせば、四×一・五×二=十二。つまり十二カ月分の勉強量が生まれる計算が成り立つわけです。数字上のマジックでもありません。「時間が足りない」と嘆いている受験生の話を聞いてみると、勉強に割り当てた時間を友達との雑談に一時間も二時間も費やしていたりするものです。その無駄な時間を勉強に充てれば、成績は必ず良くなります。
私は常日頃、「受験勉強とは寡黙の修行である」「蚕が黙って桑を食む如く、問題集の問題を黙々と解く」。それが受験勉強の王道であると言っておりますが、受験生はすべからく孤独でなければなりません。無駄な雑談で貴重なエネルギーと時間をつぶすのは以ての外。一日は二十四時間ですが、工夫次第で、有効な時間はいくらでも生み出せます。食事や入浴の時間を短くする、学校の行き帰りは英単語を覚えながら歩く、通学時も寄り道せず急ぎ足で歩く...。極端に睡眠時間を犠牲にしなくとも、一・五倍分の勉強時間を生み出すことは、さほど難しい問題ではありません。
次に勉強のスピードと集中力を二倍にする方法ですが、タイマーを利用すると、簡単にスピードと集中力を高めることができます。想像するに、多くの受験生は、長文読解や数学の問題を解くにしても、時間の観念を持たず、漠然と解いていたのでは。それを「この問題は二十分以内で解く」といった具合に、本番に即した時間制限を設けた勉強法に変える。それだけで、目標とする二倍以上のスピード力と集中力のアップにつながります。
このように勉強を三倍充実させれば、まだ十二カ月分の勉強時間の確保が可能となります。模擬試験の判定が悪くとも、十分挽回の時間は残っています。