受験生で、参考書や問題集を次々と替える人がいます。これをすると力が落ちるので、私の予備校では、受験生に「漆塗り式勉強法」というやり方を勧めています。漆塗りの家具や漆器を作る際、何度も重ね塗りをする技法を参考にした勉強法です。具体的には、漆職人が漆を塗りあげていくように、一冊の問題集を何度も解くというやり方で、問題集に取り組ませています。
予備校で実施している勉強法を説明しますと、二題飛ばしで問題に取り組みます。一番目が解けたら四番目、次は七番という具合に。この方式だと、意外に早く問題集の最後まで行き着くことができます。現役生で、授業で習っていない設問がある場合は、その個所を教科書で読ませ、それから解くように勧めています。
この時の注意点は、参考書を見てはいけません。参考書を見ると枝葉末節の迷路に陥り、次に進めなくなるからです。授業で学んでない所は、完全解答は無理かもしれませんが、パスをせずに挑戦し、答え合わせの時に正答を覚え込むようにします。この答え覚えのやり方は、有効な勉強法として有名です。
この二題飛ばしで最後までやると、漆が一回塗れたことになります。次は二番、五番、八番目と、同じように二題飛ばして進んでいく。三度目も、三六、九番目という順序で問題集をこなし終えると、漆を三回重ね塗りしたのと同じ効果があり、入試範囲の全容がわかるので、実力にムラのない受験勉強になります。
この漆塗り勉強法で問題集をやり遂げると、現役生も早い段階で、入試時に標準を合わせた問題集を完全に消化できることになります。日本史の入試問題は、江戸時代が最も多く出題されますが、高校三年生が授業で江戸時代を習うのは、入試目前の十二月か一月ですから、冬休み前に模擬試験を受けても、点数が悪いのは当然です。
その点、漆塗り勉強法を取り入れた受験生は、そのハンデもなく、模擬テストの点数は二十点、三十点と上がるはずです。何よりも、問題集を最後までやり終えたという達成感があるので、以後のやる気を持続させる効果もでます。
受験勉強のコツは、まず実際の入試問題になじむことです。それが合格力に直結するのです。とかく勉強が遅れがちの現役生は一度、「漆塗り式勉強法」を試してみてはいかがでしょうか。