国公立大学や私大理系を目指す受験生の中に、数学で頭を痛めている人が少なくありません。例年この時期は、数学の勉強法を尋ねてくる新受験生が後を絶ちません。本来なら「絶対に合格レベルまで実力がアップする」勉強法をアドバイスしなければなりませんが、数学だけは、一律に「こうやりなさい」ということはできません。目指す大学で、出題の傾向もレベルもまるで違います。当然、勉強方法が異なるからです。
基本的な勉強法は、積分の領域間題や行列式など「入試典型問題」を数多く解く訓練の積み重ねとなります。また、採点に影響する解法のプロセスの明示や論理の一貫性を身に付ける訓練も入試数学の学習の基本になります。
ところで、難関校といわれる大学の出題はどんなものか。東大を事例に説明しましょう。東大理系の数学出題は六問で、制限時間は百五十分。単純に所要時間を計算すれば一問二十五分で解ければ、全問解答できることに。しかし、入試で全問解答を目指す受験生はまずいません。実際は、二問は捨てて四問に勝負を賭ける受験生がほとんどです。毎年、数学の合格最低点は、四百四十満点中、理Iで二百十点、理IIで二百点、最も難しいとされている理IIIでも二百四十点前後。裏を返せば、半分くらい得点できれば合格ラインに達することを知っているからです。
問題は、最初から四問に絞ることで一問当たりの制限時間は四十分弱に延びるのだが、時間を費やしても、難解なのが東大の数学。その理由は、複数の分野にまたがる"複合型問題"が多く、数学的な思考法が問われているからです。とても「入試典型問題」の暗記だけでは太刀打ちできません。出題傾向は、過去の問題を解いてみると、ある程度分かります。京大などは図形問題が多く、解答時の発想や着想が試され、逆に東大は、複合問題ではあるが基本はオーソドックスな問題で、優れた思考力を試されることが分かります。
いずれにせよ、「基礎こそ到達点」。合格を可能にするのは、やはり基本をしっかり身につけること。受験勉強を開始するにあたり、目指すべき大学のレベルを知る目安になるのが、過去の出題傾向と難易度です。志望校の過去の問題を解いてみることを勧めます。