新高校三年生にとって受験準備は時間的に待った無し。先週、とくに出題が六教科九科目もある国公立や難易度の高い私学理数系を希望する受願生に向けて、そのように書いた。早合点だけでなく、決まって「今から始めても時間が足りないなら、浪人を前提に二年計画で勉強していこう」という声が聞かれます。
例年、そのような考えをする人が少なからずいます。その傾向は、公立校の生徒に多く見受けられますが、はっきり言って、浪人覚悟の受験勉強はいい結果を生みません。三年生の一年間は基礎をがっちり固め、浪人生活では入試傾向に即したより実戦的な勉強に取り組んで万全を期そう―。一見合理的な受験計画に見えますが、実効があるのは、意志がよほど強いか、目標意識がしっかりしている生徒に限った話です。大方は、浪人覚悟の受験計画を立てると、現役の一年間は、「受験勉強をしなければ」との意識はあるが、無為に過ごす結果に。現実に浪人生活を迎えて、「一年では、とても六教科九科目はこなせない。東大、京大はもう無理だ。私立に変えよう」と目標を転換するケースがほとんどです。
トップレベルといわれる東大や京大は、一年間の受験勉強だけで突破するのが難しいことは事実です。受験校の場合、一年生の段階から東大や京大を目標にした受験勉強に取り組み、それでも現役合格は難しいのですから...。野球に例えると、ランニングなど基礎をしっかりこなした投手が、投球練習を積み、速い投球ができ、しかもスタミナも切れずに、コントロールも乱れない。それと同じように受験も、高一、高二の間は授業(基礎)をしっかり身に付け、三年生になったら、本格的に実戦に即した勉強をしなければなりません。基礎学力がしっかりついていれば、秋以降にはグングン頭角を現し、難関校に現役合格する場合が多いのです。
「現役で合格を」と、懸命に勉強することにより、入試日までのギリギリの緊張感で努力と頭脳と才能を開く気力がみなぎり、直前期には、自分の想像を超える学力の飛躍となって表れる。これは、長年、受険生を教育してきた体験談でもあります。ですから高校三年生が当初から、浪人を前提にした受験勉強に取り組むことは厳禁です。