受験を控えた高校生と家族、とくに身近にいる母親との関係は、一歩間違えると家庭紛争の火種になる。現実に対処の仕方に頭を悩ましている人は多い。その参考になれば、と先週に続いて、私が運営する「みすず学苑」のやり方をもう少し説明したい。
いまどきの高校生は、プライドの高さだけは一人前。テスト結果をとやかく言うと、反発をくらう場合も多いが、そのプライドを尊重すると、意外にも子供が変わるきっかけとなる。学苑のやり方は、しかることや説教は後回し。先生と生徒間の心が通い合い、愛情から発する優しい叱責を受け入れる余地ができるまで、根気よく励まし続けていけば、落ちこぼれていた生徒たちの成績も、基本の反復練習を繰り返しているうちに、確実に上向いていきます。そうすると自信が出てくるので、今度は自分の方から積極的にやる気が出てくるのです。
取りつく島のないほどの難しさと同時に、いかにも子供らしい単純さを併せ持っているのが、今の高校生たちです。そこを理解しておけば、受験生との接し方はそれほど難しいものではないはずです。要は上から見下ろそうとせず、物事を子供と同じ目の高さで見ればいいのです。子供が進路を決めかねているようなら、「お母さんだったらA大学のあの先生に付いて勉強したいから、A大学を第一志望にしたいわ」といった会話が自然に出てくるでしょうし、読ませたい本があれば、「お母さん、この本を読んで感動したの」と、言葉が自然に出てくるはずです。
押しつけがましさがなく、子供と同じ視点からの親として素直な本音ならば、子供はそうそう反発しないものです。最近は、親と子の関係を必要以上に意識するあまり、子供の反発を受け、結果的に自ら混乱と不安に陥っている母親が多い、と思う。子供と意思の疎通ができずに悩んでいる母親は一度、親子という枠を取り払い、人間同士の関係で会話をしてみることをアドバイスしたい。対等の立場になるためには、まず、子供との間に適正な距離を置く必要があります。
前提になるのは「子離れ」です。その時期は早いに越したことはありませんが、高校生になっても、子離れができていないのは、少し問題といえます。